近江ちぢみ加工 ※<注>手揉みちぢみ加工
400年の伝統ある技術によって織り上げられた麻生地を、昔ながらの技法により作り出された「しぼ」加工品。主に座布団地などは、強い撚りをかけた緯(よこ)糸を使い織り上げ、手もみ作業により縦方向の「しぼ」が生じます。手もみによる加工が麻の硬さを和らげ、シャリ感と「しぼ」の凸凹で空気の層ができ、ちょうど良い肌触りが得られます。
ほぐし捺染・ほぐし織り
「ほぐし捺染」は簡単にいえば、糸にプリントした織物といえます。普通のプリントは布地に柄を切った型紙をあて染め柄を出しますが、「ほぐし捺染」は糸のうちに染めます。「ほぐし捺染」は仮織りの緯糸をほぐしながら織ることから「ほぐし織り」とも呼ばれています。
表裏が同じように染色されるため、裏返しても同じように扱えるのが特徴です。
経糸と緯糸が重なりあって、色柄の柔らかさ、温かみ、深みのある色調を生み出します。
経糸の捺染
長い台の上に織り上げたと同じ状態に糸を並べ、その上から型紙(型枠)で柄を手捺染し、織機にかけて織ります。この場合、単に糸を並べたのでは、染めるうちに糸の乱れが生じるので、染める糸をあらかじめ織機にかけ、ザックリと「仮織り」をしておきます。
緯糸の捺染
緯糸の場合は、仮織りはせず、織り幅と同じ板に、織る時と同じ密度に緯糸を巻き、同じ型紙で柄を手捺染します。板に糸が巻いているので、反対側(裏側)も同じように染めますが、型紙は必ず裏返して使います。
近江上布(経済産業大臣指定伝統的工芸品)
*指定取得管理団体:滋賀県麻織物工業協同組合
染め、織りのすべてが手作業で1反仕上るのに2ヶ月近くかかります。現在の近江上布の製品は、生産技法により生平(きびら)と絣(かすり)に大別され、絣はさらに縮(ちぢみ)と平(ひら)に分けられます。いずれも手織りの平織が本来の手法ですが、現在は櫛(くし)押捺(おしなっ)染(せん)や型紙捺染などの手作りの伝統技法を守りながらも、製品の大半は機械化されています。
伝統的な近江上布の生平は経糸(たていと)に苧(ちょ)麻(ま)の紡績糸を使い、縦糸(よこいと)に手(て)績(う)みの大麻を使用します。この大麻の使用が近江上布の特徴です。もともと近江は大麻の栽培が盛んであったため、明治ごろまでは大麻を使用していましたが、以後は機械紡績し易い苧麻が主原料と換わっていきました。生平は主として、座布団地・夜具・帯・法衣(ほうえ)などに用いられます。絣は、経糸・緯糸を先染めにして製織します。盛夏用着物が中心で、着尺・帯・襦袢・甚平などに用いられます。
絵絣り
絣織りのさまざまな技術を用い、作り手が得意の意匠を活かした伸びやかな表現に特徴があります。「絵絣」は、創作した図案で型を彫り、織る前に緯糸に羽根巻きにして手で染め付けておき、一旦かせに巻き取ってさらに巻き直し、絣模様がずれない様細心の注意で織り上げます。掛け軸や屏風などの作品があります。
櫛押捺染
絣の時代は、「櫛押捺染」技法による櫛押絣で始まりました。櫛押しは、ちょうど櫛の背に似た弧形の木片に染料を付け、張った糸に押捺して染色することから名づけられました。当初は、墨を染料に使った黒い絣や紺絣にも用いられたが、さらに多様な柄や色に対応できるよう技術改良され、今も伝統技術として継承されています。
より多彩なデザインや色調に対応するには、綿密な絣柄設計技術が要求されます。設計には、細長いボール紙を重ね合わせ束にした羽定規を使い、羽定規の断面部に指定されたデザインを描き、さらにばらして1枚1枚に印された色のとおりに、糸の上に櫛押しで捺染していく染色法です。糸を括らないので糸に負担がかからず、染め際もくっきりと織りあがり、上品な文様ときめ細かい風合いが、清涼感を増します。
型紙捺染
昭和8年(1933)、羽根巻きによる「型紙捺染」の技法が考案され、「麻(あさ)縮(ちぢみ)絣(がすり)」が商品化されました。「型紙捺染」は大柄や中柄、多色遣いの模様に向いています。まず緯糸は強燃糸を使い、羽根巻きといって、着尺幅の金枠に緯糸を巻きつけ、柄彫りした型紙の置き捺染していく染色法です。